医療の過程においては、予期しない患者死亡が発生し、死因が不明であるという場合が少なからず起こります。医療安全対策において、このような予期しない患者死亡の発生を予防し、再発を防止することは極めて重要であります。このためには、死亡原因を究明し、行われた診療行為を評価し、適切な対応方策を立て、それを幅広く全医療機関・医療従事者に周知徹底していくことが重要です。

　しかし、現在 、診療行為に関連して予期しない死亡が発生した場合に、専門的な観点からの真相究明と医療事故の発生に至った原因分析を行う組織は存在しません。このような現状を打破するためには、診療関連死の原因を究明し、再発防止に役立てる中立的第三者機関が必要と思われます。

　本研究は、診療関連死の調査を行う第三者機関としてのモデル事業をもとに、調査実施に必要な各種マニュアルを作成し、それに基づき調査を行う者の人材育成のための研修プログラム等の確立を図るものであり、これは、はじめての試みであるとともに、政府が設置を検討している医療安全調査委員会（仮称）の設立と円滑な運営のためには欠かすことのできない研究です。また、当該委員会の設立時期は未定ですが、早急な設立が求められており、本研究による研修プログラムの策定は、近い将来施行が予想される医療安全調査委員会（仮称）の運営に寄与するものと思われます。

　また、本研究は医師等の医学の専門家のみならず、法律の専門家や患者・遺族の立場を代表する方々の意見も取り入れることとし、遺族の心理等に配慮した適切な対応が行える者を育成するための研修プログラムの開発を目指しています。診療関連死を調査する医療安全調査委員会（仮称）や院内事故調査委員会での調査のための人材育成・教育研修に活用する研修プログラムの策定に幅広い視点での検討を行っています。