当研究班について

A. 研究目的

医療事故被害者の願いは、[1]原状回復、[2]真相究明、[3]反省謝罪、[4]再発防止、[5]損害賠償であるとも言われており、これらの基礎になるのは真相究明である。

医療の過程においては、予期しない患者死亡が発生し、死因が不明であるという場合が少なからず起こる。医療において、このような予期しない患者死亡の発生を予防し再発を防止することは極めて重要である。このためには死亡原因を究明し、行われた診療行為を評価し、適切な対応方策を立て、それを幅広く全医療機関・医療従事者に周知徹底していくことが重要である。

しかし、現在、診療行為に関連して予期しない死亡が発生した場合に、専門的な観点からの真相究明と医療事故の発生に至った原因分析を行う組織が存在しない。このような現状を打破するために、日本内科学会を実施主体として開始されたモデル事業をよりよいものにしていくとともに、モデル事業の成果を広く社会に還元し、医療の安全の向上に資する研究が必要である。

本研究は、診療関連死の調査を行う中立的第三者機関としてのモデル事業をもとに、事例の届け出基準や調査分析の進め方など具体的事項を検討してマニュアルを作成し、また、それに基づいてその調査を行うことのできる人材の育成のための研修プログラム等の基礎を提案することを目的としている。これは、我が国で初めての試みであるとともに、政府が設置を検討している医療安全調査委員会(仮称)の設立と円滑な運営のためには欠かすことのできない研究である。当該委員会の設立時期は、未定ではあるが、早急な設立が求められており、本研究による具体的調査実施要領の策定およびそのための人材育成研修プログラムの策定は喫緊の課題である。

本研究においては医師等の医学の専門家のみならず、法律の専門家や患者・遺族の立場を代表する人々の意見も等しく取り入れ、また、遺族の心理等に配慮した適切な対応が行える者を育成するための研修プログラムの開発を目指すなど、診療関連死を調査する医療安全調査委員会(仮称)や院内事故調査委員会での調査が円滑に進められるよう、幅広い視点で検討することとする。

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